『突然の君の訪問』
いつだって、彼の訪れは突然だ。
夜の静寂にふと振り向くと、そこに居たりする。
始めのうちはたいそう驚いて思わず声を上げたりもしていたけれど、次第に慣れてしまった。
夜だけでなく、昼間も現れるようになったのはいつからだろう。
居間のソファに、
キッチンの流しに、
洗面所の鏡の中に、
寝室のベッドの脇に。
そうして何年、何十年と経った。
そろそろ私も老境に入る。
彼は相変わらず、なんの前触れもなく現れる。
初めて声をかけてみようと思った時、私と同じように歳をとった彼が、まっすぐに私を見てこう言った。
「君はいつだって突然現れるね」
8/29/2024, 9:59:28 AM