ひざの上にのせた愛犬のポロを撫でながら恭子は窓の外を見た。
「あ、よかった。見てごらん、晴れたよ」
愛おしそうに背を撫でる手は慈しみに溢れている。
「よかったねぇ。雨上がったよ。雨の中いくのは嫌だろうしねぇ」
撫でられているポロは目をつむって気持ちよさそうにしている。薄茶色のくるんと丸まった毛はふわふわとしていて、まるでぬいぐるみのようだと恭子はいつも思う。
「ほらほら、虹も出てきたよ。これで渡れるね」
恭子は手を止めず、撫で続ける。
窓の外は雲の隙間から晴れ間が見えており、その向こう側にはうっすらと七色の橋が見えた。
「ポロちゃん、今までありがとうねぇ」
恭子の声が震える。ぽたりと撫でる手に雫が落ちた。
恭子の悲しみを表すように降っていた雨は、虹の橋を渡らせたい彼女の願いが届いたのか、通り雨で済んだ。
「ポロちゃん、天国(あっち)に着いたら、空から私達を見守っててね」
恭子はようやく、撫でる手を止められた。
/6/1『雨上がり』
6/1/2025, 2:29:23 PM