そんなに見ないで、と彼女は頬を赤らめた。
いつもより丁寧に、華やかに施されたメイクは彼女のもともと整った顔立ちをさらに美しく際立たせていた。髪も気合いを入れて巻いてくれたのだろう。波打つウェーブは明るい茶色のカラーにコーティングされ、この日のために心血を注いで見繕いしてくれたことを物語っている。
ドキドキはやる心臓を気取られないために、さりげない感じを装って腰に手を回す。下心などないよというように、自然なエスコートができるタイプだと宣言するように。
伝えたかった。
綺麗だよと。
周りにはまだ人だかりがいた。恥ずかしがり屋な彼女は、みんなが見ている前で恋人同士の触れ合いをするのが苦手だから、触れたくなる唇をグッと我慢して、紳士に徹した。
怖いことなど何もない。
これは祝福だ。
世界の中心は自分たちではなく、大勢の価値観に染まれるような感覚は持っていなかった。世界との違和。彼女を愛した、ただ一つの理由。
同じだった、と。
惹かれ合うようになるまでに、時間はかからなかった。出会うまでの孤独が、この日のためにこれほど長かったのなら、神様は人を作り上げるたびに失敗してばかりだ。
それでも今、集まってくれている仲間たちの、祝福の言葉を受け、自分たちは生まれてよかったとこの年になって知る。
天から授かったギフト。
彼女を愛している。
まだ恥ずかしそうに潤んだ瞳でこちらを見上げる彼女の、しとやかな色香に当てられ、吸い寄せられるように私は唇にキスを落とした。
世界結婚デー。
10/9/2023, 8:17:29 PM