海月 時

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「今日も空が綺麗だね。」
私が言う。私達は笑い合った。

「死にたい。」
彼女が虚ろな目で言う。私は何も言えなかった。私と彼女は、幼馴染だ。何をするのも一緒で、よく近所の人に姉妹だと勘違いされた。太陽のような笑顔を振りまく、彼女はもう居ない。今の彼女は、死体のようだ。

彼女の両親は、中学の時に亡くなった。交通事故だった。それからは、親戚の家に預けられていると聞く。そして、そこでは虐待に遭っている。彼女の苦しみに気付いておきながら、私が手を差し伸べる事はない。私はただ見ているだけだ。そんな最低な私のそばに、彼女は居てくれる。優しくしてくれる。それが余計、私を苦しめた。少しでも、彼女のためになりたい。そして決めたんだ。
「じゃあ、一緒に死のう。」
久しぶりに見た、彼女の笑顔は泣きそうな笑顔だった。

今私達は、屋上に居る。ここで飛び降りるのだ。
「何で、一緒に死のうって言ってくれたの?」
彼女が聞く。当然の質問だ。私は答える。
「君はいつでも私のそばに居てくれた。だから、君が死ぬなら私も一緒がいいって思ったんだ。」
本当は君の事が好きで、君が居ない世界が怖いだけって言ったら、彼女はどんな顔をするだろうか。
「ありがとう。」
彼女が言う。本当に君は馬鹿な人。私の本心も知らずに。でも、いいんだ。それでこそ、私が愛した人だから。
「死んでも一緒だよ。」
私は彼女に言った。そして、私達は飛び降りた。

死を望む彼女。少し異質な恋をした私。二人の人生も、私の恋物語も、これにて終幕だ。

5/18/2024, 2:50:37 PM