わをん

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『ところにより雨』

「雨を降らせる魔法を習ってきた」
「まじで」
本日は晴天なり。しばらく春らしい陽気が続くでしょうという天気予報の通り、洗濯物がよく乾く日が続いていた。最近の魔法教室ではいろんなことを教えてくれるんだね、などとだべりながら、住宅街だと迷惑がかかりそうなので河川敷へと自転車で向かう。菜の花の黄色が揺れる川沿いには春休みに入ったこどもたち何人かが思い思いに遊んでいた。
「それでは張り切ってどうぞ」
「しゃっす」
雨とひとくちに言ってもいろんなものがある。にわか雨に土砂降りもあれば霧雨もゲリラ豪雨もある。どんな雨が降るのだろうと思いながら草地に佇んで習いたての魔法が発動する様子を眺めていると、ぽつり、またぽつりと顔にしずくが落ちてきた。その間およそ2秒ほど。
「あっした!」
「えっ、終わり?」
空はよく晴れたまま。けれど半径1メートルほどの範囲にはじょうろで水を垂らした程度に地面が湿っていたのだった。
「これ以上やると命が危ういから」
「おなかが減る程度でしょ」
けれどいいものを見させていただいた。名も知らぬ草花たちも心なしか喜んでいたように思う。

3/25/2024, 4:23:21 AM