日の出
机に突っ伏した状態で目が覚める。
どうやら疲れて眠ってしまっていたみたいだ。
まだ薄呆けた目を擦って窓を見る。
ちょうど日の出の時間であったようで、
外は美しい朝焼けに染まっていた。
あの日、大雨ですべてを奪っていったとは思えない優しい空。
結局あの図書館は再建しなかったし、お兄さんには会えなかった。
がむしゃらに勉強して司書の仕事には就いたけれど、
同じところに来ても僕にはお兄さんは分からなかった。
僕は未だに下巻を探せていない。いや、探していない。
図書館がなくなっても、もうお兄さんに会えなくても、
あの約束はなかったことにはならないから。
ばらけて少しシワのついてしまった書類をまとめる。
続きはもう少し休んでからにしよう・・・
と思った時に、司書室の扉がノックされる。
受付に誰もいなかったんだろう。
こんな早い時間に勤勉な人もいるものだ、と返事をして表に出る。
その人が持っていたのは、あの日の本の上巻。
懐かしい。
頭によぎったそれは声に出てしまっていたようで、
お客さんが微笑ましそうにこちらを見る。
すみません、いきなりと謝ると
いいえ、いいんですと優しく返された。
その声になんだか聞き覚えがある気がした。
いや、まさか。
でも、きっと。
こちらが二の句を継ぐ前に、あちらから声がかかってきた。
もしよろしければ、この本の下巻を一緒に探していただけませんか。
あの日の約束を、まだ覚えていらっしゃるのなら。
何か自分にのしかかっていた重苦しいものが弾けた気がした。
ええ、もちろん。是非!!と大きな声を上げて受付を出る。
子供の僕が笑っている気がした。
過去のお題 遠い約束の続きでして
よろしければ作品群を遡ってそちらを見ていただけると
納得感が増えると思います。
1/3/2026, 5:21:21 PM