IROHA

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一面の闇と、静かに動く波の音。
私は一体何をしているのか…
ただ、じっとその場に突っ立っていた。

『なにしてるの?』

少し幼いような、でも凛とした声がした。
驚いて振り返ると、『誰か』が立っていた。

「いや、特に…」

言い終わるよりも早く、
『誰か』はスーッと私の横を通りすぎた。
そのまま波の音の中に消えていく。

「えっ!ちょっ……!!」

思わず、『誰か』に手を伸ばした。

捕まえた!
………

「え?」

闇から顔を出した月に照らされた『誰か』は、

「わ‥たし?」

『ワタシ』が静かに微笑んだ。

『アナタの辛いこと、全部持っていくから』

『だから、もう少し生きて』

ゆっくりと闇と波の音の中に消えていく。

最初で最後に『ワタシ』の声が聞こえた。









9/23/2022, 11:16:10 AM