『君と見た虹』
「ちょっ、ちょっと待ってよ〜」
私の声も耳に届かず君はひたすら私の手を
グイグイと引っ張る。
ずっとこんな調子で、君は行きたいところに私を振り回す。
いつもの事だが君の元気さに負けるのもいつもの事。
それに君は真っ直ぐじゃなくてジグザグだったり
道じゃないところにまで突っ走ろうとする。
引っ張られるこっちの事も考えて欲しいものだけど...
さすがに危ない時は止める。その後しょぼくれた顔で
別の道を探す君を見ると心が痛むけどわかってね。
今日は公園を突っ切って山のハイキングコースを駆け抜ける。
散歩道なのに部活の練習みたいに君は走る。
昨日の夜雨降っていたであろう道は小さな水溜まりが
あちこちにあって君はそれを思い切り踏んづけて走る。
そのまま登って登って...
見晴らしのいい所で君は止まる。
結局ハイキングコースのゴール地点まで走った。
「はぁー...もうしんどい。っておぉ〜。」
日頃来るハイキングコースだったけど、
今日は綺麗な青空に虹がかかっていた。
「もしかして、これを見たくて引っ張ってきたの?」
君に尋ねても元気よく「ワン!」と
尻尾を振っているだけだった。
語り部シルヴァ
2/22/2025, 10:43:49 AM