9/27「通り雨」
急に降ってきた。雨宿りのできる場所を探す。裏通りにひさしのある店はなく、表通りに出ようかと思うと、
「あら」
丁度ドアを開けた女性がいた。
「よかったらお茶をいかがですか?」
小さなドアの奥は喫茶店のようだ。せっかくだから入らせてもらうことにした。
淹れてもらった紅茶を味わいながら店内を見回す。落ち着いた雰囲気の店だ。
「みなさんおっしゃるんですよ、ここは別の時間が流れてるみたいだ、って」
確かに時を忘れそうだ。女性としばし話をし、礼を述べて会計をする。
外に出ると、雨は上がっていた。そして―――
見たことのない建物の群れ、見たことのない街並みが広がっていた。
ここは、どこだ? いや、「いつだ」と言うべきか?
振り返るとそこにドアはなく、長い通りがあるだけだった。
(所要時間:8分)
9/27/2023, 1:18:35 PM