【終わらない夏】
「律さん、向日葵畑ですよ!」
「見ればわかるよ…はぁ…暑…」
無人の駅舎を降りて、軽い荷物を片手に道を歩く
「だからハンディファンとか要らないんですかって聞いたのに」
「あんなもん熱風に当たり続けるだけなんだから要らない」
「じゃあせめて日傘さしてください」
「帽子かぶってるだろ」
「律さんは日本の夏を舐めてます!」
降り注ぐ日差しの中を、麦わら帽子を被って、手の甲で汗を拭う
日本の夏は暑いとは聞いていたが...これは湿気の酷さも暑さに起因していそうだ
「で?これからどこ行くんだって?」
「ちゃんと話聞いてくださいよ…、……俺の祖父の家…だった場所です」
鳴り響く蝉の声の中でも、柊の声はやけにクリアで
「…今は空き家?」
「まあ、一応親が管理してるらしいんですけどね」
「ふぅん?急に夏休みだとか言って日本まで連れてこられたと思ったら、目的地がお前の家とはね」
「いえ、今回祖父の家は拠点です。」
「拠点?」
「…言ったでしょう?夏休みだ、って」
うちの夏は忙しいですよ
そう笑った柊の顔は、影がかかっているはずなのに
嫌に眩しく見えた
8/17/2025, 3:04:55 PM