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画面の向こうで、そいつは笑っていた。
嬉しさを楽しさを全面に出して、顔を綻ばせていた。

「別れて、良かった。」

画面だけが浮かぶ部屋でポツリと呟いた言葉は案外響いて、自分で言っておきながら誰かに肯定されたようで苦しかった。
少し前まで隣で輝いていたあいつは、別の人の隣で笑顔を咲かせている。
ニコイチだの運命だのファンからさんざん言われていたのに、離れる時はあっさりだった。

プライベートでの関係だって周りの誰にも言っていなかったけれど、順調だったはずなのに。
結局好きなのは自分だけだった。
“ごめん、別れよう。”と飯の誘いを断るくらいのトーンで放たれた言葉に、頷くしかなかった。“何で”も“離れないで”も全部飲み込むしかなかった。
一度決めたら絶対曲げない人だとよく分かっていたから。

それなのに、家中あいつのものだらけだ。
歯ブラシも食器もタオルも枕も全部2つずつ。
伏せてある写真立てはいくつあるだろう。
今つけてるネックレスだって、誕生日に貰ったものだ。

全部、付き合っていた頃のまま。
確かに存在した温もりを思い出さないように、俺はソファーで目を瞑った。



(6 忘れたくても忘れられない)

10/17/2023, 1:26:48 PM