【優しさ】
無言で骨壷の前に佇む君の横に、僕もただ黙って腰を下ろす。障子の向こうでは雨音が粛々と鳴り響いていた。
妹を亡くした君が泣かないのに、幼馴染の一人を亡くしただけの僕がみっともなく泣き叫ぶわけにはいかない。じわりと滲んだ視界を、目頭に力を込めて必死に耐えた。
慰めの言葉も、励ますような温もりも、僕たちの間には必要ない。きっと周囲から見れば冷めきった関係に見えるのだろう。だけどそれでもただ無言で寄り添うこの時間だけが、生きるのが下手くそな僕たちが互いへと向けられる最大限の優しさだった。
1/28/2024, 3:35:43 AM