谷折ジュゴン

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創作 「言葉にできない」

「他人に理解されないって嘆くことってあるじゃない」

彼女がにわかにそう言い、俺は課題から顔をあげた。すると、彼女がスマホを眺めながら眉根を寄せている。

「それって、言いたいことをちゃんと言葉にできてないからじゃないの」

「また、横暴な。みんながみんな、お前みたいに国語力がある訳じゃないだろ」

彼女は鋭い目で俺を見る。俺は思わずたじろぐ。

「そういうことじゃないの。国語力がある上で、ストレートな表現をするのが好きなの」

「じゃあ、好きだ」

「今じゃないっ」

「んだよ……」

ふてくされて、課題へと戻る。

「あ、でも今のが、そうかも。ねぇ、そうでしょ」

「……うん、あえて今言った」

彼女をみると、にんまりと笑っていた。

「やっぱり、きみなら許せるね、その感じ」

俺は内心、ガッツポーズする。

「まぁ、親友だけどね」

「……そうだな」

それでもいいと、俺は課題に集中した。
(終)

4/11/2024, 11:01:23 AM