かたいなか

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前回投稿分からの続き物。「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
今回のお題回収役の収蔵部局員は、ビジネスネームを「ドワーフホト」といいました。

世界線管理局の収蔵部の、主な仕事は「チートアイテムの受け入れと保管」。
滅んだ世界からこぼれ落ちた、すごいチカラを持った道具が、他の世界に流れて悪さをしないように、
あるいは、それを他の「まだ生きている世界」のそれぞれが奪い合って、戦争にならないように。
管理局に収容して、適切に管理するのです。

「うぅぅ。酷いよ。ひどいよぉ」
で、その収蔵部に勤めているドワーフホトが、
前回投稿分で、局主催のダイエットウォークイベントに強制参加させられることが決定したワケで。
「そりゃあ、痩せたいしー、運動しなきゃだしー、スフィちゃんが企画書出してくれたのは、心遣いは嬉しいけどさぁぁ……」

もちょっと、あたしに、事前に相談してくれたって、良いじゃんってさぁ。
ドワーフホトはしくしく、ぐすぐす。
来月強制参加が決定してしまったことについて、まだまだ、しょんぼりしている様子。
というのも、ドワーフホトが指定したイベントの6月某日から某日までの2日間は、
まとめて休みをとっていた5日のうちの2日。
この間にドワーフホト、大好きなスイーツ&グルメツアーを、計画しておったのです。

食べるから体重が増えるのです。
「だってぇ、美味しいものは、美味しいよぉ」
グルメツアーが白紙になったので、その分の体重増加は、無事阻止されたのです。
「そりゃそうだけど、そうだけどさぁぁ……」

うぅ。もう、良いもん。仕事するもん。
意気消沈のドワーフホト、管理局に収容された「滅んだ世界からの遺物」の、収蔵作業に戻りました。
「で、コレが今日収容されてきた船〜?」

その日、ドワーフホトたち収蔵部に搬入されてきたのは、大きな大きな船でした。
「おっきいにも、ほどがあるよぉ」
それは、滅びに向かっていた世界を抜け出し、世界と世界の狭間のあたりを漂流していた船でした。
それは、世界間渡航できるところまで技術レベルの到達していなかった世界が、自分たちの生存する未来をかけて、開発して建造した船でした。

世界の狭間に完全に引っかかっておったので、どの世界にも行けやしない船ですが、
別の世界が他の世界へ異世界渡航する際に、邪魔や障害になるかもしれないので、
管理局が回収して、管理局の世界に持ってきて、収蔵部に収蔵登録と収容を指示したのでした。

「あたし、中、見てくるぅ」
ドワーフホトによく似た人形1号が、とってって、とってって。さっそく収容作業を始めます。
「じゃあ、あたし記録撮影する〜」
人形2号がカメラを持って後ろに続き、
「護衛は〜任せろぉー」
人形3号4号がそれぞれ、拘束銃とパルス銃を持ち、万が一に備えます。

「いってらっしゃーい。おみやげ待ってるぅ」
おや。5号は白いハンカチ振って、お見送り??
「一緒に来るの〜」
「いらないじゃん!あたし!いらないじゃーん!
1号2号3号4号でぇ!足りてるじゃぁぁん!
わぁーん本体のあたし〜助けてぇぇー」

わらわら、ぞろぞろ。
ドワーフホトの人形たちは、皆みんな、楽しそう。
収容されてきた船の、扉とおぼしき構造物の前に進み出て、それぞれの仕事を始めました。

「こんにちはぁ!こんにちはー!」
翻訳機能付きの拡声器でもって、ドワーフホトは船に呼びかけます。
「こちらは、世界線管理局ですぅ!
こちらは、あなたがたの、敵ではありませぇん!
入局・収容手続きをしたいのでぇ、この声が聞こえたら、応答おねがいしまぁーす!」

すると……?

『おお、おお!素晴らしい!成功だ!』
世界と世界の間に挟まっておった船から、返事と大きな歓声とが、それぞれ湧き上がったのです!
『諸君!我々はとうとう、成し遂げたのだ!
「未来への船」を、まさしく、完成させたのだ!
技術レベルから推測して、ここは数千年先の未来に違いない。 バンザイ、ばんざい!』

おやおや、船に乗っていた方々、
世界から世界への並行移動を、過去から未来への垂直移動と、勘違いしてしまっている様子。
まぁ、しゃーないといえば、しゃーないのです。
彼等は自分たちの命のために、今まで成功していなかった技術を、急ピッチで完成させたのです。
それが時間ではなく空間を飛び出していたなど。

「生きてたー」「有人船だったぁ」
人形たちは、さっそく、難民シェルターを管理している空間管理部の難民支援課に、
連絡を、とったは良いものの……、

「おお!美しい!ここが数千年後の世界」
「世界線管理局ですって。大きな組織だこと」
「俺の子孫とか親戚とか、まだ生きてるのかな」
「神よ。ありがとうございます!助かった!」
ぞろぞろぞろ、わらわらわら。
もともと大きな船ではありましたが、
その船の中の、いったいどこにこれほど乗っておったのだと、ツッコミを入れたくなる量の知的生命体が、小さな人間も大きなタコも、次から次から次の次と、一気に下船してきたのです!

「わぁぁぁぁ!!いっぱい乗ってたぁ!」
どうしよう、どうしよう!
予想の2倍も3倍も、なんなら5倍くらいの乗船者に、ドワーフホトはびっくり!
それから48時間かけて、ようやく、すべての乗船者を難民シェルターに収容しましたとさ。

5/12/2025, 3:11:06 AM