お題『幸せに』
※BL要素(片思い)を含みます。
チャペルの重たい木製の扉が開かれ、新郎新婦が入場する。オーケストラのBGMにたくさんの拍手に包まれながら、白い衣装を身に纏った彼らが入場する。
俺はそれを見て胸がいっぱいになった。目に入るのは、白いドレスの新婦よりもさわやかに笑う新郎だ。
「俺、今度結婚するんだよね」
その言葉に俺はビール飲んでいたのを止めた。
「え!? マジ?」
「うん、マジ」
「おめでとう!」
「ありがと」
照れくさそうに笑うあいつはきっと知らない。あの時、俺の長年の恋は粉々に砕け散ってしまった。
「幸せになれよ」
気持ちとはまったく反対の言葉を口にすることで、悲しみに押しつぶされそうになるのをどうにか堪えた。
新郎新婦が神父の前にたどりつくと、誓いの言葉を交わしていく。指輪を交換し
「誓いのキスを」
神父の言葉が俺の心臓を串刺しにする残酷な言葉に聞こえる。彼等が口づけをしている間、俺は目をつむった。こうでもしていないと、耐えられないから。
(どうか、お幸せに)
心でも呟くことで、俺は抱いていた想いを上書きすることにつとめた。
3/31/2024, 11:27:22 PM