細い細い朝の光が、水平線の向こうにラインを作り始める。抱き合うようにひとつだった黒い海と黒い空が切り離される夜明け前。
「オリオン座ももう消えるな」
夜の海と空のように俺の肩を抱いていた君が呟いた。
「ほら、見てごらんよ。水平線のギリギリに浮かんでる、あれは夏のオリオン。この時間、この高さにしか見えない夏の幻」
話しながらも朝の光は幅を作り、君がいう夏の夜の幻が消えていく。
俺たちもひかりに照らされて、この腕を離す時がくるいずれ来る。
だけど今はまだ…なぁそうだろ?
俺たちは夏、夜明け前のオリオン。
一瞬の幻。
▼夜明け前
9/14/2023, 9:19:34 AM