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「約束を守れなかったんです」
「ずっと一緒にいると誓ったのに」
仄かな夜の灯りの下、ゆらゆら金の水面が揺れた。
「怖くなってしまったから」
「動けなくなってしまったから」
「置いていかれてしまったんです」
僅か軋む椅子の下、片足は力無く重く揺れていた。
「だから、追いかけないといけないんです」
「あの人に追い付けるうちに」
「……あの人が、生きている間に」
緩やかに風を孕んだ、白とも銀ともつかない長い髪。
光無くも穏やかな金色の瞳。
ゆるり伸ばされた指は酷く青白く。
「追い付けたら、ですか?」
「決まっていますよ」
人の道を外されて、魂を歪められて、異形に堕ちたそのヒトは、
「……今度こそ、」
存外、哀しすぎるくらい。深く人を愛していた。


<旅路の果てに>

2/1/2024, 9:59:05 AM