作家志望の高校生

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「……来たぞ。」
カラリと控えめな音を立て、冷たい金属のドアを開ける。中は無機質なまでに真っ白で、青空を微かに反射して病的な色を映していた。
「ん……」
その白い部屋の中、薄く淡い水色の病衣に身を包んだ友人が横たわっていた。しばらく外に出ていない肌は、病室と同じ色をしている。何もかもが真っ白な中、彼の夜闇のような黒髪だけだ、ぽつりと色を残していた。
「ほら。どうせ昼食ってねぇんだろ。」
スカスカの学生鞄から、小さな飴玉を一つ取り出してそっと目の前に置いてやる。彼は中々に偏食家なので、薄味の入院食を中々食べてくれないのだと、顔馴染みになりつつあるナースが嘆いていた。少しでも栄養を摂ってほしくて色々と試した結果、俺が渡した物なら、多少は食べてくれる事が判明したので、俺は毎日学校帰りにここへ寄るようになったのだ。
昨日は、ビタミンとカルシウムとエネルギーがいっぺんに摂れると謳っていたゼリーを渡した。それなりに食べてくれたので、恐らくそのうちリピートすることになるだろう。今日は野菜だけは食べられたようなので、とりあえずカロリーを摂れるよう飴玉にした。
ガリガリだった身体も、ほんの少しではあるが肉が付いてきた。全然食べていない筈なのに肉が付くとは、これまでどれだけ食事を疎かにしていたのかと問い詰めたくなってしまう。それでも最近は比較的素直に食べてくれるようになってきたので、まぁ許してやっている。
彼が入院している理由はシンプルで、食事を抜きすぎて、ある日突然倒れたのである。学校の、しかも授業中に急に倒れるものだから、しばらく話題に尽きることはなかった。
俺は、彼に食事の楽しさを思い出してほしくて、通う度違うものを差し入れている。少しでも反応があれば記録して、彼の好き嫌いをなんとなく把握してきた。
ずっと前に、何故毎日飽きずに通ってくるのか問われたことがある。その時俺は確か、素直になれずなんとなくだとか言って誤魔化した。
けれど、今なら自信を持って言える。
『お前が美味いと思える物を届けたいから』と。

テーマ:あなたに届けたい

1/31/2026, 7:56:07 AM