Open App

 大切なものは何か。


 忙しいとは、『心を亡くす』と書く。

 時間があったらやっていたことをいくつも諦めていく。

 それは死に近づく行為と似ている。


 一部の大学やお寺で『死の体験についてのワークショップ』というものがある。

 現在行っていること、手に入れているもの、得ているものをカードとして持ち、『病状が進行した』として少しずつ手放していき、最後まで手放せなかったものや、手放すときの喪失感から、死に近づく際の疑似体験をするというものだ。

 家族、恋人、旅行やスポーツ、映画など趣味の時間。

 現代人は様々な時間を持っている。

 それを、『より大切なもの』を残し、手放していく。


 このワークショップのことを聞いたとき、私は『今の私と何が違う』と感じてしまった。

 休日なく、毎日夜中まで働く環境。現代日本では珍しくなくなってしまった『ブラック環境』は、まさにこの『手放すこと』の連続である。

 子どもの運動会や参観日、家族との時間、あるいは続けていた自分の趣味。それまでやっていたことを次々と手放していくことになる。

 忙しいから。


 体が健康でも、心は亡くなる。現に『死のワークショップ』と同じことをしているのだから、まさに『亡くなる』といえる。


 妙に納得である。


 そして、そんな生活を続けていたら、本当に体や心を壊すのである。

 日々の忙しさにかまけて、ワケが分からなくなっていないか。

 別に大切でもない『仕事』というカードを大事にして、『家族』や『健康』など、大切なものを捨てていないか。


 『忙しすぎる仕事』とは、心を亡くす病である。

 『そうは言っても、仕事をしないと食べていけないよ。お金がないのだから』ということもあることと思う。
 むしろ、その声の方が多いかもしれない。

 しかし、結局は『程度の問題』であり、それで体を壊し、心を壊して、働けなくなっては、やはり、食べていけなくなる。

 我々は一体どうしたらいいのか。

 『ワークライフバランスをとれる職場』に当たるまで転職を繰り返すべきなのか。

 悩みながら、今日も夜中まで仕事をするのだ。

 答えはすぐに出ない。

 しかし、考えないと、行動しないと待っているのは自分が壊れる未来だけ。



 『大切なもの』は何ですか。

4/2/2024, 10:25:06 PM