春爛漫
だいぶあったかくなってきた。ガード下のいつものねぐらで、毛布をはねて寝ていた。ここに住んでもう5年、お気楽でいい。
家族や仕事に気を使うこともなく、起きたい時に起きて、眠たくなったら寝てる。1日に1回か2回、メシを貰うためにコンビニにへつらって店の前を掃除する、なんてことはするが、嫌なことはそのぐらいだ。
あちこちからアルミ缶を集めて売ってくる仲間もいるが、俺はやらない。やってみたことはあるが、自販機の空き缶入れから持ってこようとして警察呼ばれたし、アルミ缶だって、集まると重いんだぜ。
時々、「俺はこんなところで何をしているんだ?」と自問自答してみるが、考えるのがきらいだから、いつの間にか寝てる。
さぁ、今日は散歩に行くか!ここから少し歩くと、小さな公園がある。狭い段ボールの家でずっと過ごすと、からだに悪いかなと思い、時々そこまで行って帰ってくる。俺なりの運動だな。
今日は、本当にあったかい。歩いていたら汗が出た。だが、公園の手前からどうも人が多い。ぞろぞろと、俺と同じ方向に歩いている。なんなんだ?やりにくい。
公園に着いたら「これか!」と腑に落ちた。入り口と真ん中にある大きな木に、桜がいっぱい咲いている。おとといも来たが、気が付かなかった。桜の木だったんだ!みんな、あれを見に来たんだな。
しばらく、遠くから桜を眺めた。もっと近づくと、きれいなカッコした人に、臭いって言われると悪いからな。桜、ホントにきれいだ。なんだっけ、これ?
あー、春爛漫って言うんだったなぁ。
No.150
3/28/2025, 3:54:36 AM