江戸宮

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冬休みが始まって、先生に会える機会がぐっと減った。
流石に私も多少は弁えているつもりなので、毎日学校に押しかけることは無かったから会えるのもたまにで。
早く会いたい、早く会いたい、メンヘラ彼女みたいになってしまった私をお母さんはちょっぴり心配しているようだった。

「最後に会ったのが3日前…。もういっそのこと、会いに…じゃなくて!勉強しに行こうかな。どうせやることも無いし」

半ば無理やり自分を納得させるようにそういって洋服の準備を始めた。
私の学校は補習なんかで学校に来てない限り、冬季休暇中は私服が認められている。
だから、今日は普段見せない可愛い服をきて、先生に褒めてもらおう!の作戦。
我ながらちょっぴり、いやかなりくだらないと思いつつ、やっぱり褒められたいのでお気に入りのものを選んだ。


「……あ、先生…っ!」

「え、……貴方…あれ、俺の幻覚……?」

なんで……?と頭にはてなを2つぐらい乗っけた先生。
今日も先生のかっこよさは健在で私服ぽい服装にきゅん、と胸が音を立てた。

「先生に会いたくて…じゃなくて、勉強しに!」

「ふふ、初っ端から心の声がダダ漏れだけどね。勉強するなら準備室あけた方がいいよね……先に行ってて!鍵もってくるね」

ひらひらと手を振った先生は小走りで職員室にいってしまった。
準備室に向かう途中先生服装に全然触れてくれなかったなぁってネガティブにも考えてしまう。
やっぱりあっちの服にすればよかったな、なんてグルグル考えていたら鍵を持った先生が隣に立った。

「そういえば、今日の貴方の洋服可愛いね。いつも制服だからみなれなくて変な感じ。似合ってるよ」

サラッとそういった先生はカチャ、と鍵を開けて直ぐにストーブを付けた。
普段陰キャを自称するぐらいな癖にそんなことはサラッと言えちゃうんだ。
そういえば、と続けた先生がまた話始める。

「貴方にあったら話そうと思ってたんだけど、文豪の言葉に人生は何事もなさぬにはあまりにも長いが、 何事かをなすにはあまりにも短い、って言葉があるんだけど貴方は知ってる?」

「あ〜なんか聞いたことあります。なんとか敦…?」

「あら、よく知ってるね。そう、その中島敦の言葉なんだけど、冬休みにもいえることだなってふと思ってさ」

「冬休みと人生がですか……?」

「だって、冬休み何もしないで引きこもってたら長いけど、何かを活動的にするならやっぱり少し足りないじゃない。ほら、一緒。……なんて、ちょっと横暴かな?」

「まぁ、確かに言われてみれば…ですね。それで……?」

「俺も冬休みもっと欲しいな〜!って話。それだけ」

「えぇ!オチないんですか」

「うんないよ、それだけだってば」

オチのない先生の長話をゆったり聞けるのも冬休みの醍醐味だったりするのかもしれない。
終わって欲しくないけど、早く毎日先生に会える日常に戻りたいと少しわがままな学生身分の私の願い。


2023.12.28『冬休み』

12/28/2023, 11:46:46 AM