椋 muku

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My treasure is...

いつかの私はそうやって不器用に英語を使って大切なものを発表していたっけ。

小さい頃は可愛いものやカラフルなものが好きでよく集めていた。母の化粧道具からリップを探し出してはよく塗っていた記憶もある。キラキラした世界が見えていたんだ。でも成長が早くて周りより身長が高かったこと、覚えるのが好きで周りより知識量が少しだけ多かったことがあって先生から大人びていると何度も言われた。1番記憶に残っているのは私だけ「○○ちゃん」と呼ばれたことがなかった。1度も。そのせいか、自分の好きなものを素直に好きだと言えず徐々に周りに馴染めなくなったんだと思う。

成長していくにつれ、周りは女の子らしいお洒落や美容に関して関心が湧く時期になった。私も興味はあった。ただ、周りの環境の影響もあってか、女の子として生きづらい自分がいた。女の子である自分も別に嫌いではない。ただ、時間が経つにつれて男の子でいたいと思う自分が強くなっていった。周りもいつしか「男友達みたいで安心するわ」とか「女として見れない」って男の子としての私を必要とするようになった。

私は髪を切った。部活で邪魔になるからって言うことを言い訳にしたけど、本当はもう女の子でいる自分を捨てる覚悟を決めたからだった。短いマッシュヘアに刈り上げを入れる。不安がなかったといえば嘘になる。それでも男の子として生きていく自分の第1歩と思えば難しいことではなかった。鏡に映った自分は男の子そのものだった。なりたい自分にようやく出会えた気がして心臓は高鳴ったままだった。

今になってみると、自分のために自分が決断してきた過去がとても愛おしく思える。いつか捨ててしまった女の子としての自分も大切な「自分」である。覚悟を決めた男の子としての自分も大切な「自分」である。だから私は女の子としても男の子としても生きていくことを決めた。大切な宝物、それは自分自身であった。自分自身を愛さないことには、自分自身と向き合わないことには人生というのは始まらないものである。今までの想い出全部を振り返って今だから言えること。

My treasure is myself.

題材「宝物」

11/20/2024, 11:41:09 AM