朝 目が覚める。
台所に立つ。
私の朝食は一杯の甘酒と決まっている。
レンジでほんのりと温める。
目が覚めるような甘味が口に広がる。
脳が目覚めてゆく。
そして今日が4月1日であることを思い出す。
旦那に吐く嘘を考える。
当たり障りがないこと。
誰かを傷つけることがないこと。
いかにも本当らしく、信じてしまいそうな嘘。
優しくて、柔らかい、希望に満ちていて、
それでいて裏切られても傷つかない嘘。
私はそれを寝起きの頭で考える。
そうこうしている間に、旦那がやってくる。
私の後ろに立つ。
私はまだレンジの前で甘酒を飲んでいる。
毎年同じ嘘。
それを私は告げる。
今年も旦那は引っかかった。
毎年、毎年、旦那はこの嘘に引っかかる。
特別な嘘ではない嘘が、特別になる。
来年の朝もきっと 考えに考えて、
結局 同じ嘘をつくのだろう。
こんな日にも嘘の一つも吐かない旦那に、
私は一つ、心が一瞬ときめくような嘘を吐く。
お題:エイプリルフール
4/1/2024, 10:29:51 AM