未知亜

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ㅤ柔らかな陽の差す公園で、私はあんたを嫌いだと言った。高校の卒業式の日だった。
ㅤ学校の後、よくここで過ごしていた。他愛ないことばかり、いつまでも喋っていた。この時間に終わりが来るなんて考えてもいなくて。明日も明後日も同じような日が続き、ずっとこうして隣にいるのだと信じて疑わなかった頃。
ㅤあんたなんか大嫌いと言いながら、胸が張り裂けそうになった。知られてしまうことが怖かった。だからいっそ忘れたかった。二人で過ごした時間も記憶も、そう言って消してしまいたかった。
ㅤ私を見つめる唇が歪む。目尻の下がった小さな瞳にみるみる滴が溜まるのが、ただ綺麗で言葉を無くした。

ㅤあの日の続きのような柔らかな三月の陽差しの向こうに、信じられないほど美しいあんたが立っている。
「私も、あんたのこと嫌いだったよ」
ㅤ近づいてふわりと崩れた笑顔に、私は抱きしめられる。
「私は、あんたみたいになりたかったから」
ㅤ懐かしい匂いと温もり。
「たぶん、同じでしょう?」
ㅤ私の頬を拭って、大嫌いで大好きな顔が言う。
「高校時代の記憶は、あんたのことばかりだもん」
ㅤそうだね、私はずっと、一緒に過ごしたあの日の記憶に焦がれてた。


『記憶』

3/26/2025, 9:47:59 AM