『ひとひら』
朝なんとなくで目が覚めて散歩に出たがあいにくの雨だった。
それでも散歩に行きたい気持ちが勝り外に出た。
静かな朝で、雨音が弾ける音しか聞こえない。
一枚、また一枚と落ちていく。
桜の花びらが雨にうたれ重く散る。
桜しか見えないこの並木道は今、桜の雨が降っている。
いつもと違う散り方が雨の切なさを誘う。
この雨で今年の桜は散ってしまうだろう。
散歩に行きたくなったのはこの桜の花びらを見届けるためだったのだろうか。
雨音以外何も聞こえない。
桜はただ静かに身体を濡らし泣いているように花びらを流す。
傘から手を伸ばすと強い雨粒と一緒に
花びらがひとひら優しく舞い降りた。
語り部シルヴァ
4/13/2025, 10:41:31 AM