ねここ

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【君と見た虹】

パラパラという窓の外から聴こえてくる微かな音で目を覚ました。
長時間寝ていた体を、ぐぅっと伸ばして窓際へと飛び移る。ガラスに打ちつける雨粒を見て天候が一変したことを知った。
寝る前まではあんなに晴れていたのに、雨足は徐々に強くなっていく。
今でこそ、こうして窓辺に座ってのんきに欠伸ができるけれど、三年ほど前までは自分だってあちら側にいたのだ。
今の飼い主に拾われるまでは、外の世界で生きてきたのだから。

外にいた頃はごはんを自分で確保しないといけないのも辛かったけれど、それに加えて突然の雨に襲われるというのが、ひどく体力を奪っていった。
運が良ければ屋根のあるところで雨宿りができたが、他の猫のナワバリではそうもいかない。
冷たい雨は体を冷やし、生死の境をさまよったのも一度や二度ではない。

でも今は違う。
おなかが空いたタイミングでごはんが出てくるし、おうちの中は暖かくて、もう雨に当たることもない。

「どうしたの? お外が恋しい?」

窓から外を眺めていると、そうやって飼い主が問いかけてくるけれど、その言葉を否定するように飼い主の顔に頭を押し付ける。
違うよ。今が幸せなの。
外にいた頃は空を見上げる余裕すらなかったのに、今は違う。
だって、ほら。

「あ、通り雨だったみたいだね〜。虹が出てる!」

あんなに冷たくて暗かった空に、七色の光が差すなんて知ることができたのは君がこのおうちに連れてきてくれたおかげだから。

2/22/2025, 12:08:08 PM