KAORU

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 星を見ると悲しくなる。
 例えそれが満天の星空であっても。
 子供の頃からそうだった。星が美しいほど、怖いと言って泣くような子だったとママが言っていた。
「それは、天の川の水量が多ければ多いほど、俺たちは川の向こう岸とこっち側の岸とで、離れ離れになっちまうんだからな」
 高校の入学式で、いきなり私の目の前に現れた天野星彦は、初対面の私にオマエは織姫の生まれ変わりだと言った。そして自分は牽牛の生まれ変わりだと。
 何この人!?頭、どーかしてるんじゃない?
 その日から校内を追いかけ回された私は、困り切って爆発した。
「もーいい加減にして! あなたが私を追いかけまわすから、友達もできないのよ? 新入生の中で悪目立ちして、みんな笑ってる。恥ずかしい」
「いいじゃん、別に。俺が追いかけるぐらいで引くようなやつなら初めから友達になんかなんなくても。それに、笑いたいやつには笑わせとけよ」
「う……。だ、大体私、星とか嫌いだから。きれいな星空とか怖がって泣くような子供だったんだから」
「ーーああ、そうか。それは」
 天野星彦はハッとした顔になり、冒頭の話をしたのだ。
 そして、
「やっぱりオマエは織姫だよ。七夕が近くと、そわそわするだろう?訳もなく泣きたくなったり、切なくなったりしないか、昔から」
 どき。
 え、それは、ーーうん……確かに。
 微かに私が頷くと、天野は「俺もそうだよ。ずっとそうだった」と言った。
 真顔で、いつになく真剣目をして。
 真正面から私を見つめる。
「会いたかったよ、織姫。いや、織田姫子。俺は、オマエに会うために生まれ変わってきたんだ。もう、離れ離れは嫌だ。我慢がならない。俺と一緒にいてくれ」
 何の衒いもなく、彼は愛の言葉を口にした。

#はなればなれ
「また会いましょう2」

11/16/2024, 10:28:23 AM