「ねぇ幸せってなんだろうね」
隣に座って一緒に映画を見ていた彼女が、暗い画面に流れるエンドロールを眺めて呟いた。見ていた映画のせいだろうか、彼女の瞳には水溜りができていた。そして、そんなことを口にしていた彼女は死んだ。
彼女が亡くなって三年が経った今も、恋人は作っていない。あの時何も返せずにいた自分を呪った。彼女は自殺。原因は未だに分かっていない。タバコを咥え、あの日見た映画をつける。隣にもう愛する人の姿はない。口から吐かれた煙が、部屋を覆いつくす。なんとも表せない匂いが心を落ち着かせた。映画は全く頭に入らなかった。最後に映画の主人公の男は笑った。自分は幸せだと言わんばかりに。
あの日の彼女の言葉を、声を、頭の中で反芻する。
幸せとは、愛する人が自分を愛し、傍にいてくれることだと僕は思う。
あの時の彼女の涙に、意味は存在したのだろうか。
1/4/2025, 3:23:36 PM