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鏡に映る貴方を見て 私はまた好きになる。

「ねえねえ、あの子髪の毛綺麗だよねぇ。」
「えー!わかる!てか顔も可愛くない?」
「わかる可愛いー!!!!」

私の後方から聞こえたその声は、恐らく私の事を深く知らない。
「アンタじゃない。」
慌てて周りを見て見たが、誰も私の声に反応する者はおらず、私は安心した。

みんなが綺麗可愛いと言いはやすこの顔は、あの人にだけ、嫌われていた。

「私。貴方の顔嫌い。」

1番大好きな友達に言われたその言葉は思っていた以上に心のど真ん中に響いて。 何故か納得がいってしまった。

「でも、でも、私あなたが好き、」

私は涙をホロホロ流しながら、そう伝えるしかなかったのだ。

「知ってるよ。 でも嫌い。顔だけ好きになれないの。」

悲しかった。 そんな風に言われたのは初めてで、本当に、哀しかった。 けれど、「顔だけ」好きになれないというのなら、それ以外は好きだと言うのか。
なら、顔を変えてしまおう。

「じゃあ私、顔変える。もっともっと可愛くなれば好きって言ってくれる?生まれ変わったら、ねえ、、!」

どうしても私はその子に好かれたくて、努力するつもりで言った。そんな言葉だった。

「そんなことしたら。縁切るよ。 私別に貴方の顔は嫌いだけど、死んだ欲しいほど憎んでる訳じゃないもの。
死んで欲しい訳じゃないわ。」

しょうがないから隣にいてあげる。
仕方がないから一緒に生きてあげる。
そんな風に言われた気がして、私は嬉しかった。
彼女は私の親に殴られて真紫に染まった頬を優しく包んで、

「私、今の貴方の顔嫌いだから。早く治そうね。」

「うん、うんっ、、」

だから私は、いつだって鏡の中の貴方になりたかった。

8/18/2023, 12:44:20 PM