小説
おばみつ
キラキラと星のように輝くイルミネーションを見上げながら息を吐く。白く染まった息は上へ上へと登っていった。
隣を見るとイルミネーションと同じくらいに目を輝かせた甘露寺が感嘆の声を漏らす。
「わぁ...!綺麗...!」
「あぁ、とても綺麗だ」
俺の視線は既に上から横へと移っていた。淡い光を顔に受けながら一生懸命見上げる姿が、俺には美しく映った。未だ彼女は俺の視線には気が付かない。
しばらく見つめていると、彼女の若草色の瞳がこちらを映す。
「もう!伊黒さん、私のことじゃなくてイルミネーションを見てよ!」
膨れた頬をつつくと、ふしゅっと白い息が空気中に舞う。俺の目にはもう彼女しか映っていなかった。
「どっちも見てるよ、...綺麗だ」
熱を込めた視線を送ると、彼女の頬が少し赤くなる。
「...イルミネーションがでしょ?」
「...どうかな?」
俺はそっと甘露寺の甘く柔らかな唇を、自らの唇と重ね合わせた。
12/14/2024, 11:01:42 AM