村人ABCが世界を救うまで

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彼女の身体が乱暴に扱われた。
それだけでも怒りが止まらないのに、これが何度も…

明けきらない夜の時間帯だが、思わず外套を手にして、とんでもなく凶暴な気持ちを抱え扉を出ようとした時だった。

彼女がこの場を強く制した。
「やめて!」
身体がビリっと反応した。先ほどとは熱量が違う。
「やめて…。なんで。貴方らしくない」
意味がわからない。
だけど振り返って彼女の姿を見て、さっきまで燃え滾るようだった頭の熱がすうっと落ちてきた。

色白の首にも胸元にもうっすらと傷があった。頬にも殴られたような痕。
彼女がぼろぼろの薄い服1枚でここまで来たんだと思ったら、他にすべきことがあるんじゃないかと頭に警告音が鳴る。
手にしていた外套を空気に晒されていた彼女の肩に掛けた。
「えっ…」
彼女の瞳にあるのは怯えと動揺。さっきまで男の力に支配されていたのだ。
「怖くなかったら、ここ、座って下さい」
ベッドではなくソファに座り、隣をとんとんと叩く。要は座れと。

腰を下ろしてきた彼女に、感謝の意味を込めて「抱いても?」とそっと聞く。
何かを勘違いしたのか、恥じ入るようなとんでもない恐慌状態になる彼女。
「そんな、こんな粗悪品を…!」
なんだ粗悪品て…
大きな男物のジャケットごと、彼女の身体を寄せた。嫌がらないことに気をよくして、腕を回してそっと抱きしめる。まだ自分の匂いしかしない。
衣擦れの音がして、男物の大きな厚手の外套を着せてもなお、彼女は華奢だった。
震えている。
「行っては、ダメ…」
「はい」
彼女の命令は絶対だったはずだ。
粗悪品と自ら言うなんてあんまりだ。だけど言葉にはできないでいる。
そして、自分は彼女には欲情しない。
肌には触れない。これは自分なりのけじめ。

夜の静寂の中、やっと彼女が身を預け、小さな頭が肩に乗った。呼吸音に混じって涙を堪えるような音がする。
「命令は…守ります」
どんなにこの世界が理不尽でも守ると誓った。
指先までちからを入れてぎゅっと抱き直すと、切なそうな喉に引っかかる声がした。


ルール

4/24/2026, 11:37:44 PM