堕暴螺

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──ねえ、どうしていつも一人なの?

彼女との関係は、放課後の教室での一言から始まった。あの無遠慮な問いかけに、私は答えを返すことなく、ただ沈黙を貫いた。だって、一人でいることが私にとっては当然で、その理由を考えたことなんてなかったのだから。

それからというもの、彼女は何かと私に話しかけてくるようになった。

──どうして私の顔を見ないの?
 うるさい。私には、その必要がない。

──どうして他人と話さないの?
 分からない。それが当たり前だから。

──どうして当たり前なの?
 分からない。

彼女と話すたびに、心の中のもつれが増していくのを感じた。もう次は話さないでおこう、そう決めた。

ある日、彼女は突然私の手を引っ張り、無理やり立たせた。拒絶の言葉は喉に引っかかったまま出てこなかった。

──当たり前って、なんだろう。

私の手には、新品の補聴器が握られていた。

7/9/2024, 6:31:31 PM