『もう二度と』
残業で遅くなった帰り道。ふとバイクを止める。
道の端に止まってエンジンを切って春風を感じる。
晩御飯の香りに混じってどこか懐かしい匂いがする。
なんだろう...
目を瞑って唸っているとお腹が鳴った。
帰路の途中だったことを思い出して帰りを急いだ。
走ってるときにも懐かしい匂いが鼻を誘う。
なんだっけこの匂い...
夕焼け、懐かしい...
あ、そうだ思い出した。高校生の頃の帰り道だ。
当時付き合っていた恋人と学校帰りに
恋人を家まで送った時にあった匂いだ。
あれから何年経ったんだろう...
それでも思い出すのは高校生の思い出が
それほど大事だからで、今でも愛おしい記憶なんだろう。
もう二度と、戻らない時間。
だから愛おしくて、求めてしまう。
まだ日が沈むと寒い...視界が滲む前に早く帰ろう。
バイクの速度をあげて急いで家に向かった。
語り部シルヴァ
3/24/2025, 10:54:10 AM