西の護符屋

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 好きな人の写真を枕の下に置いて寝ると、その人が夢に出てくるよ♡という女児向けのおまじないを、皆様は試したことはあるだろうか。
 私は、ある。
 当時好きだったアイドルの雑誌の切り抜きを丁寧にハードケースに入れて、丁寧に枕の下に置き、これまた丁寧に髪をブローして、なんならお気に入りの香水をシュッとかけて、寝た。

 しかして、夢は、見た。

 ただし、鳥の着ぐるみを着た私が、推しにチュンチュカ囀られながらハリセンでしばかれる夢を。

「せめて、日本語を喋って欲しかったな。」
 
 目が覚めると、網戸の外で鳥は囀り、枕から大きくズレていたハードケースが覗いていた。切り抜いた雑誌の裏は人気芸人だった。

 そのアイドルがドラマでシリアスに涙を流すシーンを見ながら、どうしてもその夢を思い出す私。残念ながら幸せな擬似恋から目が醒めるのには、そう時間はかからなかった。

 おまじないはお呪いと書くのだと、まだ知らない頃の私の話。
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フィクション。夢で擬似恋に気付くこともあれば、逆もあるかと思いまして。
後なるべく、どうでもいい話を書いてみたかったのです。
チュンチュカ チュンチュカ チュン!!

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目が覚める、迷いから覚める
酔いが醒める、覚醒
味噌汁が冷める、ほとぼりが冷める

 恋の場合はどれが正解か悩みましたが、欠点を見つけて嫌いになった時は恋から冷めるだけど、アイドルへの擬似恋だと、酒から醒めた場合と似てるかなと思い醒めるにしました。
 酒と推しは百薬の長。

 醒は、酒器と澄み渡った星空が合わさって清と同じ読みと意味になった漢字。物語性を感じる成り立ちですね。

7/11/2024, 1:06:47 AM