世界のおわり

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《ところにより雨》
僕を拾って手当してくれたニンゲンは目の見えないお人好しだった。
僕はだいたいの身体的特徴はニンゲンであるため、だと勘違いしてしまったのだと思う。
僕は恩を返したらすぐに家を出ていこうと決めていたのだが、目が見えない分普通よりも危なっかしい。
恩を受けた子が命を落とすのは目覚めが悪い為、ここまで成長したら出ていこうということを繰り返している内に長い時間を共にすごした。
ここまでくると自分の仲間だと認識する他ない。
もうでていく気はなくなった。
邪魔者になるまで、ニンゲンの傍で一生を見守ることを決めた。




私が拾った同居人はやさしいヒトだ。
私のことを幼子とでも思っているのか、とても過保護だ。
私は目が見えない代わりに他の五感はより敏感だ。
だけど、私は目が見えないから、ヒトと違うところを見つけることはできない。
だから、可愛い同居人はヒトなのである。

だってあなたの秘密を知ることより、あなたを失ってまたひとりぼっちになるほうが怖かったのだから。
少し嘘つきで私を傍で見守ってくれるあなたが大好きだったから。


ニンゲンに寿命が迫ってきた。
何かやりたいことはないか、と聞いても
「あなたといつも通りの日々を」としか望まれない。
だから、ニンゲンの死臭に気が付かぬふりをして、いつも通りの日常を送ることしかできない。
ニンゲンは眠ることが多くなった。
日課の散歩も満足に歩けずに、僕が抱きかかえるようになった。
僕を忘れた。
お兄さんと呼んで慕ってくれるようになった。



ニンゲンが死ぬ日になった。
何故か今日死ぬという確信があった。
自己紹介をして、散歩をする。
ちゃんと、ちゃんと。
いつも通りの日々を。

散歩の途中に、ニンゲンが船を漕いで段々目を閉じていく。
「また起きたらあそぼう」
まだ寝ない、とグズるニンゲンにそう約束をする。
何かの間違いでもう一度会えないかの下心もある。


「今日の天気は晴れときどき雨だ」
寝ているニンゲンに対してそう呟く。
雨が降るかもしれないのだから、傘も差さないで寝ているニンゲンに水滴の跡が残るのは、当然のことなのだ。



今日もまた、いつもの家を出て、散歩をする。
ニンゲンにまた会う日を待っている。

3/24/2026, 3:20:20 PM