300字小説
願はくは
「……願はくは花の下にて春死なむ……」
満開の桜の木の下に敷いたマットレスの上に寝転んで、彼がか細くなる息の下、紡ぐ。
「……更に満天の星空の下で友に看取られてとは贅沢極まりないないな……」
『友ですか……』
アンドロイドの私の言葉に彼は薄く笑った。
『それに、今、この光景があるのは全て貴方の功績です』
気候が乱れたこの星を以前のような落ち着いた状態に戻したのは。……それが満開の桜が見たいという個人的な目的の為だとしても。
彼のバイタルが段々弱くなっていく。
「……ああ……良い夜だ……」
『……そうですね』
やがて呼吸が静かに止まる。
『……おやすみなさい。貴方の功績は友の私がいつ何時までも語り継いであげますから』
お題「星空の下で」
4/5/2024, 12:18:34 PM