まだ、家族と一緒の寝室で寝ていた小さい頃。
私は寝ている家族の寝息や、心臓の音に耳を澄ませていた。なぜだかわからないが、寝顔を見ると死の恐怖に掻き立てられていた。
寝息や心臓の音が止まってないことを確認すると、少しでも恐怖が和らいだ。そして、薄ぼんやりついた常夜灯の中眠りにつく。
思い当たるのは、祖父の遺体を見たこと。なんの変哲もない、事件性もない死だったが祖父は目を瞑って、冷たくなっていた。ほっぺたをつついたら起きそうなほどよく見た寝顔。でも、もう目を覚ますことはない。
寝顔とは死を思わせるもので、大した意味もないあの生存確認作業は、目に焼きついた祖父のあの顔がきっかけのような気がしている。
5/4/2024, 1:10:03 PM