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「試験前ってやたらと掃除するだろ?」
「あるあるだな」
「で、これだ」
 そう言って竹中は目の前のプラモデルを示した。掌に乗せられる大きさのロボットはよく見ると、プラスティックの質感は見られず、紙で出来ているようだ。紙に写った文字まで、ロボットの柄に見える凝りようで作成の苦労がうかがえた。
「勉強しろよ」
 ただえさえ明日の試験は、難しすぎて事前に参考例題が配られたぐらいなのだ。ロボット作ってる場合ではない。ごく当たり前の忠告を入れると、竹中は深く頷いた。
「俺そう思う。でもな、困ったことがあって」
「なんだよ」
 竹中はなぜか声をすぼめて言った。
「これ、例題のプリントでできてるんだ」
 馬鹿野郎。心からの叫びで俺は竹中を怒鳴りつけた。

 二人で一緒に俺のプリントをコピーしに行ったのはその後のことだ。

2/28/2024, 10:58:47 AM