イオリ

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無垢

 いま話題といえば、都知事選、裏金、あたりだろうか。

 テレビでもネットでも、今では誰もが政治家を批判している。この人は誰だろう、という若い芸能人も、平然と大物政治家を名指しして責め立てているのだ。僕が子供の頃では考えられない光景だ。

 おそらく、としか言えないが、裏での政治家からの圧力は今とは比べ物にならなかった筈だ。政界に諫言できる芸能人は、ごく限られた人のみだった。出始めの芸人やグラビアアイドルが、彼らの批判を口にするなど考えられない時代だった。

 だめだ、という話ではなく、そうあるべきと、もちろん思っている。ただ、そうあるべき状態になるまで、つまり誰もが自由に発言して良い、という社会になるまでに、多くの先達が苦労を重ねてきた、という事実を忘れてはならないと思っている。

 インターネットの登場で、個人の発言力は確実に強くなった。だが、ネットがあればそれだけで個人の権利が守られる社会になるわけではない。現に彼の大国では、著名人の失踪事件は毎年発生している。道具だけではなく、人間の方もアップデートしていかなくてはならない。

 
 僕ら世代から見ると、ネット社会に生まれた世代は、生まれた時から個人の発言力はすでに強い。だから、弱い状態から強くなった、という部分に関して無垢に見えることがある。強いのが当たり前だと、軽い気持ちでなんでも言っていいのだと。

 繰り返すが、なんでも言っていいのだ。社会はそうあるべきなのだ。ただ、なんでも言っていい、しか知らないのと、これは言って良いがこれは言ってはいけない、を意識しておくのとでは、言葉の覚悟に差が出るように思う。一見、まともな政治批判をしているようで、中身が薄っぺらい発言がよく見られるのはその辺りが理由かもしれない。

 楽しい言葉や嬉しい言葉は、いい加減な覚悟で発しても、悪いことはあまりないかもしれない。けど、批判的な言葉は誰かを傷つけることがあるかもしれない。

 影響力の強い人、特に若い人が、僕が思う「無垢」さ故に、誰かを傷つけることが無ければいいなと思っています。

5/31/2024, 12:36:53 PM