答えは、まだ
クロと散歩に出る。
いつも行く公園。
同じ道。
クロは草の匂いを嗅ぎながら、一歩一歩、確かめるように進む。
私の中に、答えは、まだ、ない。
子どもの頃は、きっと答えがあると思っていた。
大人になれば、わかることばかりだと思っていた。
でも、大人になった今も、わからないことだらけ。
たとえば、この道が、どこに続いているのか。
どこへ向かっているのか。
いや、そういうことじゃなくて。
人生とか、そういう、漠然としたこと。
でも、そんな大げさなことじゃなくてもいい。
今日のごはんとか。
明日の予定とか。
そういう、些細なこと。
クロは、そんなこと、考えてないんだろうな。
ただ、今、この瞬間を生きている。
草の匂いを嗅いで、
土の感触を足で感じて、
風の音を聞いて。
「答えは、まだ」
そう呟いたら、クロが、こっちを向いて、
首をかしげた。
その目が、キラキラと光っている。
まるで、「それでいいんじゃない?」って言っているみたいに。
答えは、きっと、見つけるものじゃなくて、
感じていくものなんだろう。
クロと一緒に、こうして歩く日々が、
いつか、その答えになるのかもしれない。
そう思ったら、少しだけ、心が軽くなった。
歩きながら、クロの頭を撫でる。
今日も、明日も、
私たちは、答えを探す旅の途中。
でも、急ぐ必要はない。
ゆっくりで、いい。
それで、いい。
9/16/2025, 2:01:13 PM