メガネの人

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純粋な風はありえない。

風はいつも、何かを一緒に運んでくる。

目に見えるもの、小さくて細かいもの、目には見えないけれど感じれるもの。

言葉や思いなんてものも、運び出してくれるかもしれない。

風が吹く度に、この世のあらゆるものは循環をはじめ、留まっていたものはぞくぞくと動き出す。


そう思うと、風はだいぶと迷惑なヤツだ。

この世には、他のものと交じりたくない。ひとりでいたいものだっているはずだ。

わざわざ表に駆り出して、見たこともない場所へ運び込まれて、何かも分からないものとごちゃまぜにされるなんて、とんでもないこと。

そうやって、周りを巻き込まないと気が済まないのだろうか。


風の音は、大きい小さい関わらず、微かに「泣き声」のように思う。

風が泣いてるのは、誰かと交ざりたい寂しさ、なのか。
どうしたって、ひとりで吹くことが出来ない、不幸のせいなのか。

だから、風はよく、雨を纏う。

「泣いてる」風には相応しい。

そしてその「泣き声」が止むのは、何も変化しない、誰にも混ざらない、純粋な孤独。

無風の時だけなのだ。

4/29/2023, 6:56:46 PM