霜月 朔(創作)

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冬のはじまり



秋の終わりの休日。
街角のカフェで、
俺は一人、
静かな、カフェタイム。

温かなカフェラテに、
少し季節を先取りした、
真っ赤な苺のタルト。

今年の冬も、俺は一人。
街を行き交う、見ず知らずの、
幸せそうなカップルたちを、
窓越しに眺める。

職場では、同期も先輩も上司も、
この季節になると、
恋人自慢に花が咲く。
甘い笑顔で語る、
同僚達の姿を眺めて、
俺は心の中で、
そっと溜息を吐く。

カップを両手で包み込む。
カフェラテの温もりが、
少しずつ胸に染み渡る。
ラテアートのハート模様が、
俺の心にチクリと刺さる。

フォームミルクの泡の、
口元でそっと弾ける、
僅かに擽ったい。その感覚が、
俺の心の淋しさを、
ひとときだけ、
忘れさせてくれる。

温かくて、甘くて、
ほろ苦い、カフェラテは、
俺の凍えた心を、
そっと抱き締めてくれる。

冬のはじまりが、
静かに訪れた。

でも、冬が来たなら、
春の訪れも、
…きっと遠くない。

11/30/2024, 5:51:27 AM