粉末

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ごつごつした指で器用に花束を作る彼。
この小さなお店は今、かわいいが宇宙一充満している。

「すごい。こんなにきれいに結べるんですね。」
「…それは、どうも。」
大きな体を小さくして仕上げのリボンを結ぶ姿は
どう見たって絵本の中のやさしいくまさんだ。
「今日も素敵。」
「…あ、あの。その…なんだ。」
てきぱき動く手とは裏腹にシャイな彼の言葉はなかなか次に進まない。そんな所もかわいいから頬がゆるんでしまう。
「はい、なんでしょう?」
「…何故だ。何故俺なんだ。」
なぜ、と言われても。
はじめてあなたを見たとき体中から好きが溢れ出た。
理由は分からない。知らない人だったから。
「わかりません。あなたを好きになった理由は言葉にできないの。今は、まだ。」
「…そうか。…はい、お待たせしました。」
そっと優しく手渡された花束。フラワーアレンジとかむずかしいことはわからないけれど絶対にかわいい。道行く人全員に自慢したい。
「いつか言葉にできるようになった時伝えます。お花かわいい。ありがとう。」
「…いや、別にいいんだ。お、俺も言葉にできない。その、君になんと言えばいいのか。」
え、それはつまり脈がゼロというわけではない?
まだ生きてる?へー。ふーん。なるほど。
「じゃあ言葉にできるまで待っていますね。」
「…はい。…あ、ありがとう、ございました。」

…いま笑ってくれた?

魂が頭の5センチ上くらいまで抜け出てそうな心地で
お店を出た。
私の手の中には花束とアナログなポイントカード。
裏面のくまさんのスタンプを見て心から何かが溢れて来たけれどやっぱりこの気持ちは


言葉にできない

4/12/2024, 6:42:16 AM