しいな

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出会いはあまりにも理不尽だった。今でも忘れることはない、この先思い出すこともないだろう。

素敵な御人と出会い、恋をして、愛を育むなど理想の結婚が叶うことは無いと思っていたけれど、当時は考えうる限り最悪だった。
家業である雑貨屋が同業の嫌がらせにより廃業。父は類まれなる話術で商才に恵まれていたからだろうか。慕う人も多かったけれど、その才能を妬む人達も大勢いた。
そしてあろう事か我が家を救う条件として、私と同業者の息子の結婚を結ばせた。私は人柱と言ったところだろう。父の切羽詰まった表情をみてしまったら断る術はなかった。

最初から決まっていたことだ。明日、私はこの生家を旅立っていく。

8/7/2023, 1:33:13 PM