『希望を背負う妹』
階段を一つ一つ降りる度に、コツコツと靴が音を奏でる。階段を降りきると、目の前には真っ黒い扉。扉の向こうからは女性の声と男性の声が聞こえる。
私は一つ深呼吸をし、ドアノブに手をかけた。
「失礼致します」
中に入り、その声と共にお辞儀をする。「顔を上げて」という声を聞き、頭をあげた。部屋にはやはり、私が仕える主と最近仲間になった男がいた。二人で何を話していたのだろうか。…私にそれを知ることは出来ない。
主の目線が私に向く。
「どうしたの?」
「あの子が目覚めたようです。たった今報せがありました」
私のその言葉に二人とも息を飲んだ。
「…そう……」
ほぅと息を吐いた主は窓へと歩く。その窓から見える景色を見ながら目を細めた。
「ようやく…ようやく貴方に会えるのね……」
背筋がゾクッとする。愛情溢れる優しい声色だったが、私にはそれがなんだか怖かった。
主の視線がもう一度、私に向いた。
「迎えに行ってあげて。あの子は私たちの希望……丁重に扱うのよ」
「かしこまりました」
先程とは違う、威圧感のある声でそう言われる。もう一度頭を下げ、部屋を後にした。
バタンと閉まった扉に寄りかかり、息を吐き出す。あの空間は空気が重く息がしずらかった。私は首にかけてあるロケットペンダントを見る。
……一刻も早く、あの子を助けにいかないと。
「もうすぐお姉ちゃんが行くから……待っててね」
そう呟き、妹の写真が入ったロケットペンダントをそっと握りしめた。
【たった1つの希望】
3/2/2026, 12:57:46 PM