そう言って、どんなにも勇気を出して一歩進んでも、最後に行き着く先は黄泉比良坂。
桃の木を横切り、竹の群れをすり抜け、葡萄の蔓を潜り抜けてしまったら、腐臭と死臭が漂うイザナミと対面だ。身体にへばりついている八つの雷たちは、相変わらずやかましい。くしゃみもするし、咳もするし、痰も吐くし、豚のような笑い声もする。
イザナミなんか口から脱糞している。悪魔の製造に忙しい。そんなだから、私を騒がしい雷の豚児どもと見間違っても致し方ない。あちらは目までも腐っているのだ。自分の醜い姿さえも見えていない。だから、私が文字通り、現世に後ろ髪を引かれていることにも気づいていない。
やはり、こんな穢らわしい場所から出ていくべきなのだ。いやそれでは、また身を滅ぼしてしまう。ここから出ていっても良いと確信するまで、耐えねばならない。
いつかは現世に通ずる私の髪が、イザナギに見て触れて、願わくば、三つ編みにして欲しい。
自らをナイル河の一滴と例えたイザナギに、どんな道であれその道を歩み続けるイザナギに、そして、人間に生まれたのだから、本当の耳と目で聞いて見て生きよと言うイザナギに、私のたましいと繋いでいて欲しい。
黒にも茶にも赤や金、更に白にも輝く私の髪をどうぞ編んでください。私の良き父たちよ。
(250606 さあ行こう)
6/6/2025, 1:15:50 PM