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命が燃え尽きるまで

出来心で洞窟探検をしたら道に迷った。懐中電灯もスマホの電池も切れ、闇の中を一人でさまようばかりだ。出口を探しているはずがどんどん地中深くに入り込んでいる気がする。
亀裂から光の漏れる壁を見つけ喜んで破壊してみるとそこは地下の大空洞だった。外ではなかったことに落胆するより異様さに息を飲んだ。数えきれないほどの巨大な石筍が床を埋め尽くしそれぞれの先端には蝋燭のように炎が灯っているのだ。
石筍の間を歩き回って管理者を探したが誰もいない。近づいてよく見ると、石筍は逆さになった人体を模したものだとわかった。細工は精緻で、普通に街中にいる人が全裸で石化したように一体ごとに個性がある。それが天井を向いた足先から徐々に燃えて失われていくのだ。燃焼の程度は様々で人体がほぼ完全に残っているものから頭しかないものまであった。
無意識に探していたのだろう、ある人物にそっくりな像をみつけた。俺が数年に渡って復縁を迫っている元彼女だ。向こうにはその意思はないらしく無駄だと思いながらも執着を消すことができない。
その像は腰から上が残っており、いつか見たのと同じ嬉しそうな表情をしていた。
大空洞から登りの坂道を見つけ、彼女の像を抱きかかえてその炎で道を照らすと嘘のようにあっさりと地上に出ることができた。出てから気づくと炎は消えていた。
翌日俺は彼女の死亡を知った。
地下でのことと彼女の死に関連性があるのかはわからない。
彼女の像は今もまだ俺の部屋にある。火をつけようとしても二度とつかない。

9/15/2023, 5:55:34 PM