天野沙愛 Sara Amano

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子供の頃、母に連れられて買い物に付いていくことが多かった。
僕は、いつも好きなお菓子を2つだけ、買ってもらっていた。

その日は電化製品が壊れた為、電気屋さんに行くことになった。

今でもその日のことは覚えてる。

おもちゃ売り場が、そこにはあったんだ。
好きな戦隊モノの、赤色のセンター。
物凄く欲しくなって、「これ買って」もちろん言った。

「家にたくさんあるでしょ」って言われた。

同じじゃない、全然違う、サイズも違うじゃないか。

これがいい、これが今欲しい。
そう思った。

聞き分けのいい子供でいたつもりだった。

「なんでだめなの?」

「そんなものに今使うお金なんてないわよ」

僕の家は、貧乏だった。

ただでさえ、お金ないのに、家電製品が壊れた影響で、そんな余裕はなくなった。

だが、子供の頃の僕は、そんなこと分からなかった。

怒られるがまま、耐えるしかなかった。



─────だから大人になった今、買おうと思えば買える。

でも、その当時欲しかったこと、買ってもらえなかったこと、その時の聞きたくない言い訳、今でも覚えてしまってるよ。

自分の子供には、そんな思いしてほしくないなと思うね。

僕のように我慢はさせたくない。

嫌な気分させたくない。甘やかし過ぎだろうか。

それでも好きなもの持たせてあげたい。

ないものねだり、尽きることはないだろう。


『ないものねだり』2024,03,27,天野沙愛.

3/27/2024, 1:59:39 AM