冷凍餃子とパックご飯、インスタント味噌汁。
写真を撮って、家族のLINEへ。
灰色のご飯なんて言われるのかな、と思いつつ
ベチャッとしたご飯を口に運ぶ。
まぁ、美味しいし楽だし、作る気力なんてないからなんて言われてもこのままだろうけど。

「ごちそうさまでした」
10分で用意したご飯は小説を見ながら一時間で。片付けは朗読を聴きながら五分で。
ご飯を食べた私は、本を片手に服を脱ぎ、音読を聴きながらシャワーを浴びる。
そして離れないセリフと、少し大きいベッドの右側に沈む。
今日も机の上のインクは減らない。

通知のない夜と空白の増えた日記は、一人であることを深くそして暗い場所に運ぶ。
「おかえり」
いつ返ってきただろう
「今日はハンバーグ食べたな」
いつ言われたのだろう
「ちょっとそこまで買いに行こ！」

なすがままの私の足は、近くのスーパーにある。
「ハンバーグだから、ひき肉だよね」
まだ何も分かっていない私は頷く。
「まって、餃子の皮あるじゃん、、、」
分からない私はそうだね、、、とつぶやく。
「けどハンバーグ、、包めばいいかな？」
きっとそうだね、と私の心が言うと、
虚空に消えた。

鳥の声が聞こえる。カーテンから少しだけ明るい朝日が覗く朝は、枕がひとつ濡れていた。
優しい光に照らされる机の日記。丸く綺麗な文字は、子供のような君。
既読のないLINEに今日は、餃子バーグと、
色あせた会社は今日だけは長く感じた。

頑張った私にご褒美を、来てくれた君に感謝と忘れられないご飯を。
美しい文を書く君の姿は綺麗で、小学生のようなわがままを言う君の姿は明るくて、写真に写る君の姿はもう動かなくて。
半分忘れていた君は、日記にもこの料理にも。
「明日 日記を出版社に持って行いくね」

著 (綺麗な君)
タイトル 優しく包むのは人とハンバーグ

数千のアンチも数万のファンも知らない君の姿は
数億の反響を呼び、天まで届くほど轟いた。
そして、私を優しく包んだ。

5/23/2025, 1:21:43 PM