霧夜

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心の中に、トプトプと。

毎日毎日、少しづつ。

注がれて行く、この想い。

零れ出ないように蓋をして、隠して来たけれど。

貴方のせいで、溢れ出てしまったの。

---二作目---

あいつは、俺に沢山の愛情をくれる。
言葉でも、行動でも、余すことなく、たっぷりと。

優しく、包み込むように俺の事を抱きしめて、
『大好きだ』と『愛している』と『愛おしいな』と。

...俺には、何も返すことは出来ないのに。
ただその腕の中に収まり、あいつを受け入れてやることしか出来やしないのに。

...だからなのだろうか。
いつか愛想つかれてしまうのではないかと。
俺なんかと居るよりも、魅力と愛情に溢れた人と一緒になった方が、あいつは幸せなのでは無いかと。
容姿端麗、頭脳明晰のあいつの事だから、きっといい人なんてたくさん見つかる。

そう...見つかってしまう...出会えてしまうのだ、俺よりも良い人と。

...そんな事を考えては、勝手に夜な夜な涙を流す。
嫌な妄想だけが頭の中に湧いて溢れてくる。

離れて欲しくない、ずっと一緒に居たい、俺もお前が好きだから、大好きだから、愛しているから。
そんな事を言えたのなら、果たしてどれほど良かったであろうか。
本当に身勝手な話だし、しょうもない話だなと、頭の片隅で苦笑してしまう。

...嗚呼、俺にもっと、あいつに与えられるほどの愛情があれば...。


#愛情
131作目










あとがき(なんやかんやその思いを打ち明けたあと)
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「...なんだお前、そんな事で悩んでいたのか」

黙って俺の話を聞いていたあいつは、少しだけ呆れて風な口調でそう言った。

「...はぁ?そんな事って...俺にとっては...そんな事なんかじゃ...」

その言葉に、俺はなんとも言えない気持ちになると共に、語尾が小さくなってしまう。
俺にとっては凄く大切な問題だから。

「ばーか、悪い意味でじゃねぇよ」

「?......!?!///」

俺が一人少し思考に浸っていると、あいつは俺の事を抱き寄せながら、いつもの様に肩口に顔を埋めだした。
こいつの癖なのかなんなのかよく分からないが、抱きしめてくれる時は、いつも赤ん坊のように肩に顔を沈める。
いつもやられているのだが、やはり急に抱きしめられるのは慣れない。いや言われたからと言って大丈夫と言うんけでは無いが。
兎にも角にも、俺の顔は熱くなっている、これだけは今わかる事だ。

「...お前がこうして、俺の事を受け止めてくれてるってだけで、充分幸せなんだよ。と言うか、お前は何も返せていないと言うが、俺は毎日お前から貰ってばっかりなんだぞ?言葉じゃなくても、行動で伝わってくるし。お前に飽きる?お前より良い奴が見つかる?そんなの以ての外だ。俺にはお前しかいないからな」

「ッ/////」

...何も言えなかった。嬉しさとか、安心感とか、そう言うのが一気に体を満たしていくから。
ちょっと泣きそうだった。
何もかも嬉しくて、いつもはしないはずなのに、あいつの背中に腕を回し、抱き締め返していた。

...あぁ、俺はまた。あいつから貰ってしまった。
愛情、という名の結晶を。

11/27/2023, 11:07:14 AM